教員コラム「江口忍のマイオピニオン」


2024.3.30

 

23. 新プロジェクトを募集します

 

 前の投稿から1年以上も経ってしまいました。前回は「年に4、5回は投稿したい」などと書いてしまいましたが、恥ずかしい限りです。こういうことは軽々しく書いてはいけないですね。

 

 今年度は入試関連の仕事から解放され、新聞のコラムも1本降りたので、いくらか時間に余裕ができて、ここへの投稿も増やせると思っていましたが、なかなか思い通りになりませんでした。

 

 ただ、今年度はゼミとして新しいことに取り組むことができました。それは岐阜県本巣市への政策提案です。本巣市は市北部の根尾地区にある現在休館中の公設温泉施設・ホテル・パターゴルフ場等からなる「NEO桜交流ランド」の利活用策を公募していました。江口ゼミでは24年ゼミの有志17名でチームを組み、7か月にわたり現地フィールドワークなど調査を進め、議論を重ねて提案をまとめ、11月に藤原市長をはじめ幹部職員の方々を前にプレゼンを行いました。

 

 提案コンセプトは「ねぇ おいでよ 二輪車のまち 本巣」です。市を縦断する国道157号線がバイクや自転車のツーリングに適していること、国道157号線の根尾地区以北、福井県との県境区間はかつて「落ちたら死ぬ」という看板が置かれ“酷道”として全国的に有名なこと、世界で活躍するフリースタイルBMX選手が根尾地区の出身で市が応援していることなどから、二輪車を軸に市をブランディングするという視点で「NEO桜交流ランド」の利活用策を考えました。提案内容の詳細には触れませんが、好意的な評価を頂いたと思っています。活動を通じて学生たちも大きく成長してくれました。

 

 私が今年度、久しぶりにゼミのメインメニュー以外のことをやってみようという気持ちになれたのは、少しずつ仕事を減らすことができたからです。時間に追われ、気持ちに余裕が持てない状況では「誰かのためになる仕事」はできません。最近の大学教員は、授業以外に学内の仕事を山ほど抱え、日々の仕事に忙殺されています。「こんなことをしてあげたら学生の成長にプラスになるのに」と思うことがあっても、なかなかそれに取り組む余裕がありません。

 

 この4月から私のゼミでは名古屋市港区役所と協力して「港区魅力発信プロジェクト」という活動を新たに始めます。今回は名古屋市港区の魅力発信について、「何を」「どのように」したら効果的か提案するとともに、実際の魅力発信活動も進めていきます。活動を通して学生たちがどう成長してくれるかとても楽しみです。

 

 私のゼミでは企業や自治体の方々とのプロジェクトを今後も増やしていきたいと考えています。いろいろ制約もありますが、私たちと何か一緒にやってみたいという企業や自治体の方がいらっしゃいましたら、遠慮なく私どもにご連絡いただければと思います。よろしくお願いいたします。

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2023.2.13

 

22. 危機感なき名古屋

 

前回の投稿が20215月なので、ほぼ2年ぶりに書きます。前回も1年ぶりの投稿だったので、この3年間、ほとんど休眠していたこのコラムも、ようやく書くことができました。

 

休んでいた理由はとにかく忙しかったからです。ここ何年か、ずっと何かの締め切りに追われ続けていました。これではまずいと、昨年は仕事を減らすことを決め、5年半続けた中日新聞の連載コラムや、行政の委員などを順次降りて、仕事に追い立てられる状況から脱することを目指しました。そしてついに、少しですが隙間時間を作れるようになって、今日はこうしてゼミの教員コラムに向かい合うことができました。

 

この4月から、勤務先大学で、キャリアセンター長という就職支援部門の責任者的なことと担当することになり、その関連の仕事が増えそうですが、それでも今までに比べれば時間に余裕ができると期待しています。書くネタには困っていないので、できるだけ多く、少なくとも年に45回程度は投稿していきたいと思います。

 

さて、今回は、名古屋・愛知の将来に対する危機感について話をします。

 

昨年10月、中日新聞で3か月に担当している景気球という経済コラムに、「危機感なき名古屋」というタイトルで次の文章を寄稿しました。自分で書いた文章とはいえ、著作権は中日新聞に渡しているため私が全文掲載するのはダメですが、同社に実害を与えるものではないと思われるので載せます。

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「名古屋って、ちょっとヤバくないか」。筆者は最近とても心配している。

 

今、名古屋は三つの大きな課題に直面している。一つ目は「リニア」。静岡県で工事に入れず27年開業は厳しくなったものの、名古屋と東京が40分で結ばれる時代は確実に迫っている。リニア建設が決まって10年以上経った。その間、乗換利便性向上のための名古屋駅の改修や、名古屋高速の改良など、ハード整備は方向性が定まっている。

 

一方、リニアを名古屋の都市戦略にどう生かすかの議論は、「○○したら観光客が増える」、「××すれば東京から名古屋に人が移り住む」など「~たら・~れば」の話に終始している。人を呼ぶため、産業を伸ばすための具体的な都市戦略はいまだに見えない。

 

名古屋の成長を支えてきたのは西三河の自動車産業だ。トヨタの力強さは健在だが、西三河での生産活動は低下している。全国から若い働き手を集め、住宅取得時に名古屋など周辺都市に送り出す、西三河の「人口のポンプ機能」も低下している。西三河の次世代自動車関連の産業集積は厚くない。トヨタと名古屋経済のリンクも弱まっている。

 

残念なことに、名古屋ではこの状況がヤバいとほとんど思われていない。これこそが名古屋が抱える最大の問題だ。

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  このコラムが出た後に、「愛知 転出超過2.8倍 名古屋圏は4年連続」(2023131日付中日新聞)、「名古屋市、初の「転出超」に 22年の人口移動」(同日付日本経済新聞)、「トヨタ 東京本社移転検討 26年度にも、品川駅西に」(202322日付中日新聞)、「スペースジェット開発中止 三菱重 凍結から2年」(202327日付中日新聞)など、名古屋・愛知にとってマイナスといえるニュースが相次いでいます。 

 

転出超過については、私がコラムで書いた通り、トヨタ(豊田市を中心とする西三河エリア)の人口吸引力の低下が最大の要因で思われます。では、なぜ西三河の人口吸引力が下がったかというと、クルマ全体に占める「MADE IN AICHI」の部品割合が減ったからです。現在の自動車は、膨大なソフトウェアが装備されていますが、そうしたソフトを提供する企業は愛知県以外(特に東京)に立地しています。今後、自動車が自動運転や電動化の方向に進めば、「MADE IN AICHI」の部品はさらに減っていくでしょう。今までは「トヨタの繁栄=名古屋・愛知の繁栄」でしたが、すでに、企業としてのトヨタの好不調と、この地域の経済の好不調とのリンクが薄くなりつつあります。

 

トヨタの東京本社が今の飯田橋から品川駅に移転するニュースもこの地域にとっては大いに気になるニュースです。品川駅は新幹線の駅があり、リニアの駅も置かれ、名古屋駅からわずか40分で結ばれます。また羽田空港にも12分で行くことができ、成田空港へのアクセスも大幅に改善される見通しです。このようにポテンシャルの高い品川駅に東京の拠点を移すということは、現在名古屋駅前のミッドランドスクエアにある名古屋オフィスの一部機能が品川に移ってしまうことは容易に想像できます。

 

長くなるので今回はこのあたりで終わりますが、今の名古屋・愛知は極めて重要な分岐点にあります。もう遅いかもしれませんが、今こそ名古屋・愛知の都市戦略について真剣に考える必要があると思います。

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2021.5.16

 

21. 江口ゼミの新プロジェクト

 

前回このコラムを書いたのが去年の524日。なんと1年間もさぼってしまいました。

 

書かなかった(書けなかった)理由はいろいろあるのですが、私は日頃から「人の本当は言葉ではなく行動に表れる」と言っているので、何を言っても言い訳になります。要するに、この一年間、私はここに何か書くことよりも他のことを優先させたということです。

 

ただ、最近、ゼミ生、卒業生、外部の方から立て続けに「ゼミのホームページのコラム、怠けてないでちゃんと更新してください」と言われてしまいました。私自身も前から気になっていたので、今日は久々に書いてみます。

 

今日のテーマは、江口ゼミがこれから始める新たなプロジェクトです。今回、名古屋学院大学現代社会学部江口ゼミでは、学年の壁を超えたプロジェクトとして「ゼミのブランディング」に取り組むことにしました。

 

なぜ、このようなプロジェクトを立ち上げることにしたのか。私は、大学での学びは教員が与えるものではなく、学生自身が自ら考えて行動することを通じてこそ得られると考えています。そうした学びを実現するには、自分たちで考え、行動できるプロジェクト的なものがあることが望まれます。

 

これまでもうちのゼミには、企業や自治体から時々「一緒にこんなことをやらないか」とお誘いをいただくことがありました。ただ、こちらにかかる負荷が大きすぎたり、ゼミ生を無償のアルバイト的に使いたいという意図が透けて見えたり、先方の事情で途中で終わってしまったりと、なかなかうまく進めることができませんでした。

 

ただ、アクティブなゼミ活動は大学や学部のブランド力の向上につながります。うちのゼミは、学内や学部内では多少のブランド力は出てきたように思いますが、他大学の有名ゼミにはまだ足元にも及びません。特にうちは大学のブランド力が微妙なだけに、うちのゼミのブランド力を向上できれば、大学や学部のブランド力向上に役立つかもしれません。

 

また、ゼミのブランディングへの取り組みは、ゼミ生が就職した先での仕事力アップにつながります。民間企業では、自社の商品やサービスを買ってもらう仕事が主な仕事になります。地方公務員も、市町村の魅力を高めることで、住民や企業に選ばれて、行政サービスを買ってもらうという点では、民間企業と変わりません。ブランディングに重要なのは中身の質を上げることと、見せ方を工夫すること。学生にとってどちらも大事な学びの機会になります。

 

さらに、ゼミのブランディングというのは、企業コラボなどと違って相手がおらず、学生を教員だけで完結するのも利点です。もちろん理想としては、学外の方と関わりながら進める経験を積むことは望ましいと思います。一方で、相手方の事情により途中で断念せざるを得なくなるリスクもあります。その点、ゼミのブランディングというテーマなら自分たちのやりたいようにできますし、失敗を恐れず挑戦できます。

 

加えて、ゼミのブランディングは、例えばSWOT分析など、ゼミで学んだことを活かすことができます。うちのゼミは都市の発展戦略がテーマですが、都市の発展戦略もゼミの発展戦略も、戦略の立て方は共通する部分が多くあります。

 

 このプロジェクトには現在20名弱のゼミ生が参加する予定です。私はできるだけ口を出さず、見守りつもりです。ゼミ生たちがどのようにこの課題に取り組むのか、とても楽しみです。

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2020.5.24

 

20. 学生はお客か

 

 私事ですが、私は現在バイクの免許を取るため教習所に通っています。バイクに乗ろうと思った動機は、夏の間の趣味が欲しかったからです。私の最大の趣味はスキーで、冬はほぼ毎週子供を連れて滑りに出かけるのですが、冬以外は完全にインドア派で、仕事や日常の買い物以外ではほとんど外に出ません。何か夏に外へ出る趣味を持ちたいと思うようになり、頭に浮かんだのがバイクでした。

 

 バイクは高1の夏からずっと乗っていました。バイクといっても原付でしたが、当時の原付は規制が緩くて、時速100キロくらいまで出すことができました。もちろんバイクに乗ることは当時も校則違反。でも同級生も結構乗っていて、高3の夏休みにはクラスの数人で伊勢志摩に泊まりでツーリングに出かけたりしていました。

 

 教習所は専任担当制で、私の担当は30歳前後のちょっと不愛想な教官です。教習では毎回、「二―グリップが甘い!」「クラッチの一気に切るな!」と厳しく指導されます。

 

 話は変わって、今回のタイトルを見てください。学生の皆さんは、自分のことを大学にとっての「お客」だと思いますか。私は、まぎれもなくお客だと思っています。ところが、大学の先生に「学生はお客」だと言うと、ほとんどが強い拒否反応を示し、嫌な顔をされます。

 

 大学は学生から4年間で400万ものお金を払ってもらっています。長年企業にいた私からすると、もらったお金に相当する価値を学生に提供する義務があると考えます。だから、学びにならない授業や、ただ卒論を書くためだけのゼミをする先生に対しては、「ぼったくりバー」に似た感情を覚えます。ぼったくりバーになりたくない私は、授業の改善、ゼミ生の成長につながる機会の提供、就活指導などに誠実に取り組むよういつも心がけるようにしています。「学生(と保護者)が求めるものを提供する。これが大学教員の仕事だと思っています。

 

 ただ、学生がお客だからだといって、お客の言うことを何でも聞くのが正しいとは思いません。ただ卒業証書が欲しいだけの「お客」に、400万円で証書を渡して惟位とは思いません。それは、卒業させる以上は一定の「品質保証」をしなければならないからです。

 

 そうした点で、大学も自動車教習所も基本的には同じです。教習所もお金を払えば免許をくれるわけではありません。たとえ指導が厳しくても、運転に必要な技能を身に付けさせ、卒業生の品質保証をして送り出す、これが教育機関の最大の務めです。

 

 このコラムは新入生も読んでくれているでしょう。新入生はまだピンとこないでしょうが、大学の先生というのは本当に人それぞれです。先生によって大事にしていることがまるで違います。誰が正しく、誰が間違っているということはありません。秋にはゼミ選択が行われますが、ゼミを選ぶときには、テーマ以上に、その先生が何を大事にしているか、あるいは何をどうでもいいと思っているかを見極めることが重要だといえるでしょう。

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2020.5.18

 

19.自分で考え、自分で動く

 

 下にあるのは私が今年の新入生に向けて書いた文章です。大学教員としてのものの考え方が伝わる内容ですのでここに転載します。

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新入生の皆さん、こんにちは。まず皆さんにお詫びを言わなければなりません。皆さんは入学後に予定していたガイダンスを受けられず、わからないことばかりだったと思います。コロナ自体は天災ですが、結果的に不安にさせてしまい申し訳ありませんでした。

このレポートは、現社の教員が専門分野との関わりからコロナの問題を書くことになっています。ただ私には専門分野と呼べるものがありません。大学で教えているのに専門がないなんて変に思われるかもしれませんが、元々私は大学教員ではなく、ずっと民間企業で働いていました。前職の地域シンクタンクでは、顧客の企業や役所から考えて欲しいと頼まれたことに答えを出すのが仕事でした。このため守備範囲は広いものの、広く・浅くの“何でも屋”に育ってしまいました。ある意味、この学部に似ているかもしれません。

さて皆さんは「大学で一番大事なこと」は何だと思いますか? 私は、「自分で考え、自分で動く」ことだと考えています。私は全学年に共通する江口ゼミのモットーにこれを掲げています。皆さんは大学を卒業すると、親や学校の庇護から離れ、自分の力で生きていくことになります。社会に出て何かの課題に直面した時、それにどう立ち向かい解決するかは、自分で考えて自分で行動する他ありません。「自分で考え、自分で動く」は言い換えると、「自分の人生を他人任せにしない」ということです。この力は、子供よりも大人が、学生より教員が、部下より上司が上ということはありません。入学した大学の偏差値とも無関係です。名学生が名大生より優れているなんてことは当たり前にあります。この力を伸ばすには、日常の思考習慣と行動習慣を意識して変えることが大事です。

私のゼミにはホームページとTwitterがあります。運営はすべて広報担当のゼミ生が行い、教員の私は関与しません。昨年末、彼ら(当然女子を含む)はTwitterに「質問箱」の機能を付けました。当初の目的はゼミ選考で学生から江口ゼミについての質問に答えるためでしたが、4月に入ると、どこで見つけたのか、新入生や保護者から大学生活や履修について質問が届き始めました。新入生が不安を抱えており、大学がそれに対応できていない状況に気づいた彼らは、#春からNGUなどハッシュタグをつけて、どんな質問も受け付けるので積極的に質問箱で聞いてほしいとツイートしました。そこからはまるで野戦病院。彼らは履修要項を片手にあらゆる情報網を駆使し、約1ヶ月間で350件の質問に答えました。皆さんの中にもきっと世話になった人がいることでしょう。

彼らは私の指示で動いたのではありません。この状況で自分たちは何ができるか考えて動いた結果です。彼らを動かしたのは、「自分で考え、自分で動く」習慣と、新入生の不安を他人事としない当事者意識です。コロナ対応では「あれがない、これを何とかして」と誰かに何か求めるばかりの人が多い中、彼らは実に立派でした。これができる学生を育てる場こそが私にとっての大学です。

最後にコロナのことにも触れておきます。“何でも屋”の私の仕事の一つが新聞の取材を受けたり、コラムを書いたりすることです。下に5月3日日曜の「中日新聞を読んで」を載せておきます。特に解説はしません。4週間に一度登場するので読んでみてください。

 

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2020.3.4

 

18.まちづくりは誰のため?

 

 先日、学生を連れて名駅と栄のフィールドワークを行いました。栄は久屋大通公園の北エリア、中日ビル、ミツコシマエヒロバス、大丸松坂屋百貨店新店舗、旧丸栄など、建設、解体それぞれ工事が進み、ずいぶん姿が変わりました。

 

 このうち久屋大通公園北エリアは今年の夏にリニューアルオープンの予定です。栄にとっては名駅に対する反転攻勢のスタートとなる大きな出来事です。

 

 ですが、この北エリアの再開発について、私は少々気になることがあります。それは、どうも「住む人のためのまちづくり」に寄っていないかという点です。

 

 一般論として、まちづくりにおいて最も大事なのは、そこに住む人にとって良いものかどうかという視点です。ですから通常のまちづくりでは、住民との合意形成が欠かせないものとされています。一方、大都市の都心のように多くの来街者が集まるエリアでは、来る人が快適で楽しめるように「来る人のためのまちづくり」も大事になります。

 

 「住む人のためのまちづくり」と「来る人のためのまちづくり」は全く別物です。むしろ対立するといってもいいかもしれません。例えば近年京都では、観光客の急増で住民がバスに乗れなくなるなど「観光公害」といわれる事態が目に付くようになりました。

 

 栄の久屋大通公園北エリアは、名古屋都心への来街者を増やしたいのであればさまざまなイベントを積極的に開催し、活気のある、言い換えれば「がやがやした」雰囲気にすることが必要です。これに対して住む人が求めるのは、子供たちがサッカーなどを自由にできる、緑に恵まれた静かな空間です。

 

 私自身は、栄や名駅のように多くの来街者を獲得して名古屋に活気をもたらす役割を担うエリアについて、住む人よりも来る人重視のまちづくりをしていくべきと考えています。こういうことを公言する人はあまりいない気がします。大学の先生などいわゆる有識者といわれる方々は、たいてい「市民に寄り添う」ことを大事にされますから、私は異端かもしれません。

 

 都心のまちづくりは誰のためであるべきか、これから学生たちにも一緒に考えて欲しいと思います。

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2019.9.20

 

17. これから地価が上がるのは・・・

 

 今朝の新聞に、今年7月1日時点の基準地価(都道府県地価調査結果)の記事が掲載されています。

 

 全国的には、地方商業地の地価が28年ぶりに上昇に転じたことが注目されています。背景にあるのは地方での外国人観光客の増加です。特に札幌、仙台、広島、福岡といった地方の中心都市で地価上昇が目立っています。

 

 名古屋圏では、住宅地は高層マンションが増え続けている栄・伏見エリア、商業地はまだ割安感がある名古屋駅西口と金山、そして港区のみなとアクルス周辺で地価上昇が顕著でした。これらのエリアの地価上昇に関しては、私はかなり前(みなとアクルス周辺については計画の公表時点)から予想し、いろいろな場で書いたり話したりしてきました。このうち、みなとアクルス周辺の地価上昇については懐疑的な見方も多くありました。

 

 今朝の中日新聞でも、港区の地価上昇がアクルス周辺に限定されるのか、他のエリアにも広がっていくかで、関係者の見方が分かれているということが書かれています。この点について、私は少なくとも、地下鉄名港線沿線の港区・熱田区の地価上昇は今後も続くと予想しています。既に本学のある日比野駅あたりはかなり地価が上がってきています。

 

 名港線沿線は、栄や名駅へのアクセスの良さの割にこれまで地価が低い水準にとどまっていました。これは水害リスクの高さや、国道1号・23号の大気汚染、かつての新幹線騒音、教育環境などの負のイメージが影響しているわけですが、大気汚染や新幹線騒音は概ね過去のものとなりましたし、教育環境は私立中学に行けば大きな障害ではなくなります。今は少ないですが、おそらくこの先名港線沿線にも私立中学の受験塾が増えてくることでしょう。

 

 名港線沿線は栄・名駅へのアクセスが飛びぬけて良いエリアです。栄からみなとアクルスの最寄り駅の港区役所駅の所要時間は14分。地下鉄東山線で栄から14分というと東山公園と星ヶ丘の間になります。しかも港区役所はJR、名鉄に乗り換えができる金山に8分で行くことができます。

 

 それでは、これから地価が上がりそうなエリアはどこかあるでしょうか。私は、①豊橋駅、②三河安城駅、③あおなみ線沿線 に注目しています。

 

 このうち②の三河安城駅周辺は既に相当地価は上がっています。それはマンション開発の増加とともに、デンソーなど大手自動車関係企業のIT部門が集中的に立地しはじめたことが理由です。三河安城駅は新幹線の駅があります。つまり東京へのアクセスはとても良い場所です。ただ、ひかりが止まらないので東京(品川)への所要時間は2時間を超えます。

 

 その点、①の豊橋駅は1時間に1本ひかりが止まります。ひかりなら品川まで1時間13分で行くことができます。リニアができれば東海道新幹線はリニアと競合するのぞみが減り、ひかり・こだまが増えることは間違いありません。そうなると豊橋駅の新幹線の利便性は格段に向上します。さらに豊橋は、名古屋へもJR在来線と新幹線、名鉄線の3路線でアクセスできます。ビジネス拠点としても住宅地としても大きな可能性も秘めている豊橋駅前ですが、今のところはそれほど地価の上昇は見られません。

 

 ③のあおなみ線沿線については、どんな地価上昇の要素があるか、皆さんも考えてみてください。

 

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2019.9.7

  

16. ゼミ選択(その2

 

 夏休みもそろそろ終わりが見えてきました。秋学期に入ると、うちの学部ではゼミ募集が始まります。

 

私は2年前のこの時期に、この欄でゼミの選び方について書きました。詳しくは、2017.9.17付 「5.ゼミ選択」を読んでください。

  

この2年の間に私はゼミ選択、特に3年・4年ゼミの選び方について、大きく考え方を変えました。

  もし今、ゼミ選択について学生からアドバイスを求められたとしたら

 ・よほど興味が持てないものでなければゼミテーマは何でもいい

  ・選択基準は、①そのゼミに応募してくるだろう他の学生のクオリティー、②教員がゼミにかける時間・労力と指導力(過去に受けた授業や1,2年でゼミ生だった友達から話を聞くなどして判断)、の2点。つまり「教員と学生の質」が最も大事。

  と答えます。

 

ここでいう「教員の質」というのは、あくまで学生目線でものです。大学教員は研究者ですから、研究業績として良質な著書や論文を出すことで評価されますが、ゼミで指導を受けるにふさわしい教員の質はそれとは別物です。

 

,4年ゼミは、そのメンバーで就活と卒論を乗り切ることになります。卒論はともかく、就活はチーム戦。就活に無関心な教員やモチベーションの低いメンバーの下では決定的に不利になります。(もちろん就活なんてどんな環境でも個人の力でやっていくべきものと言い切れる人は別ですが)

 

私は、ゼミ選択は大学選びよりはるかに重要だと思います。本学のように、就活市場において大学名でアドバンテージが取れない大学では特にそうです。

 

この文章を読んで内容に共感してくれた学生は、私のゼミへの適性があると思いますので、ぜひ応募をお待ちしています。

 

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2019.6.9

 

15. 私、ちょっと浮いてます

 

 大学教員になって4年ちょっとが過ぎました。今春には初めてゼミから卒業生を送り出し、一通りのことを経験して、この仕事のことがだいたいわかりました。

 

 同時に、最近わかってきたのは、どうも私は変わっている、周囲からちょっと浮いているみたいだということです。

 

 別に、勤務先がこの大学だからということではありません。それは、大学というところが、今まで働いてきた民間企業とは大きく違っているからです。

 

 民間企業は、基本的に「儲けること」が目的です。儲けること、あるいは儲けにつながることをするのが良いこととされます。

 

 一方、大学は儲けのため存在しているわけではありません。もちろん、受験者が増える、難易度が上がる、就職が良くなる、有名になる、などはなんとなく良いこととされています。ですが、教職員全体がそこを意識しているかといえば、必ずしもそうではありません。

 

 教員についていえば、研究を中心にしたい人、教育に重きを置く人、正直なところ何のためこの職業に就いているのかわからない人、実に千差万別です。

 

 私が大学教員をしているのは、「学生に笑って卒業してもらいたいから」、この一点です。社会に出る前の最後の時間を過ごすのが大学。学生たちにはここでちゃんと成長して、胸を張って社会に出て欲しい。そのためにできることを自分で考え、実践する。それが、大学教員としての私の行動原則です。

 

 この原則を守ろうとすると、どんどん自分が周りから浮いていく感じがします。私は自分のない面が顔に出る、いや意図的に顔に出すタイプです。だから、周りに対して「学生にとってはこうした方がいいのに、どうしてあなたはしないの?」という空気を出してしまいます。サラリーマン時代、特に最初に勤めた日本長期信用銀行時代は普通に組織人だったのに、ここではKY気味です。

 

 こんな変わり者の教員ですが、意欲を持って私のゼミを選んでくれた学生には決して損はさせません。このことは約束できます。

 

 笑って卒業したい人は、ぜひ江口ゼミへ!

 

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2019.4.21 

 

14. 卒業生に贈る言葉

 

 先月、江口ゼミの1期生が卒業しました。

 

 卒業式の日はいろいろな事務手続きで忙しく、ゼミ生全体に向けて何か話をする時間がありませんでした。このため彼らには当日の夜LINEでメッセージを送りました。一部下ネタもありますが、私が彼らに伝えたいことをストレートに書きました。このホームページは江口ゼミに応募しようという1年生、2年生も見てくれていると思いますので、ゼミ選択の参考にもう一度その時のメッセージをここに載せることにします。

 

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 江口ゼミ1期生の皆さんへ

 今日は卒業おめでとう。
 今日はゼミ生全員に向けて話をする機会がなかったので、ここにひとこと書きます。

 最初に、春休み中の旅行のお土産とメッセージブックをありがとう。私は教員になるつもりなんて全くなく生きてきたので、まさか自分がこんなものをもらうことになるとは夢にも思っていませんでした。正直にいいますが、ホントに嬉しいです。この仕事をしてよかったなあと思います(ただしいつまで続けるかは??ですが)。

 皆さんは、学部にとっても、そして私自身にとっても1期生なので、やはり特別に思い入れがあります。バラバラなメンバーがどうまとまっていくのか、就活ではどこで悩んだりつまづいたりするのか、なんでちっとも卒論を書き始めないのか、卒論はどのくらい直さなきゃならないのか・・・すべてが初めての経験でした。初体験の感想は、やっぱりちょっと痛かったですね。

 皆さんが名学に入った時の気持ちは一人ひとり違うと思います。ここに入れて嬉しい人もいたでしょうし、ここに入ることになって落ち込んだ人もいたでしょう。ただ流されて来ちゃった人もいるはずです。でも今日、卒業の日を迎えて皆さんが「ここに入ってそんな悪くなかった」と思ってくれていたら嬉しいです。

 卒業にあたって皆さんには3つのことを伝えたいと思います。

 1つ目は、社会人になってもゼミのモットーである「自分で考え、自分で動く」を忘れずにいてほしいこと。社会に出ても、皆さんの周りには、昔からこうやってきたから、上司が言ったからなどの理由で、何をするのがベストかを考えない人がたくさんいます。皆さんには何事もまずは自分で考える習慣をつけてもらいたいです。

 2つ目は、とりあえず今自分のいる場所で花を咲かすことを考えること。私は嫌な仕事はとっとと辞めればいいという考えですが、辞める前に何かしら結果を残せるように努力と工夫をして、小さくてもいいから花を咲かせ、その過程で何かを得て欲しいと思います。

 3つ目は、名学出身ということに胸を張って欲しいこと。どの職場でも、一度入ってしまえば出身大学でその後の評価が左右されることはありません。大学名で有利不利が出るのは就活、それもエントリー時点までです。この先皆さんが職場で評価されるのもされないのも皆さんの実力によるもので、大学のせいではありません。だから名学出身であることに胸を張ってほしいのと同時に、出身大学のことなど忘れて欲しいと思います。

 以上、少し言葉足らずですが、この先の人生で少しだけでも心に留めておいてくれたらと思います。

 では長くなりましたが、皆さんお元気で。

 話したいことが出てきたらいつでも連絡してください。

 じゃあまた。

 

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2019.1.3

 

13.「高輪ゲートウェイ」

 

 この秋学期はとても忙しく、書きたいことはたくさんあったものの、半年も更新をさぼって年を越してしまいました。去年はとにかく忙しすぎたので、今年は仕事を減らしてちゃんと更新する時間を作りたいと思います。

 

 半年ぶりに取り上げる話題は、来春に山手線では約半世紀ぶりの新駅として暫定開業し、2024年度に本開業する予定の「高輪ゲートウェイ」駅です。駅舎のデザインは2020年東京オリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の設計で知られる隈研吾が担当し、折り紙をモチーフとした大きな屋根が特徴です。

 

 さて、高輪ゲートウェイという名前はあちこちから批判を受けています。駅名はJR東日本が一般公募して6万件を超える応募がありました。公募の結果は1位が「高輪」、2位が「芝浦」。いずれも駅ができるエリアの名称で、ありきたりではありますが、駅名=地名というのは自然な感覚です。一方、駅名に決まった高輪ゲートウェイですが、公募での投票数で何と130位。「駅名が長すぎ」「高輪はいいがゲートウェイが意味不明」「130位の駅名に決めるくらいなら公募なんかするな」と、ネットだけでなく新聞・テレビからも叩かれています。

 

 私は昨年末横浜に福山雅治のライブを観に行ったついでに高輪ゲートウェイ駅の周辺を時間をかけてフィールドワークしてきました。そこで得た結論は「高輪ゲートウェイという駅名は間違いなくあっという間に定着する」というものです。

 

 今回わざわざ高輪ゲートウェイを見ようと思ったのは駅名騒動に関心があったからではありません。高輪ゲートウェイ駅の場所は、2027年開業予定のリニア中央新幹線が乗り入れる品川駅のすぐ近く。1キロも離れていません。品川駅は東海道新幹線が停車し、近年国際線を大幅に強化している羽田空港にノンストップ列車ならわずか12分。そしてリニアができれば名古屋へ40分(将来的には大阪まで67分)で行けるようになります。つまり品川は間違いなく日本でナンバーワン、世界でも指折りのゲートウェイ(玄関口)になります。それを見越してJR東日本は高輪ゲートウェイ周辺を「グローバルゲートウェイ品川」として再開発を進めています。開発エリアの面積は13ha、投資額は5000億円で、最先端機能を持つオフィスやホテル、商業施設を含む高層ビル7棟を完成させ2024年ごろに街開きをする予定です(第1期は4棟)。名古屋駅のJRセントラルタワーズとこれからスタートする名鉄の大型再開発の投資額がそれぞれ2000億円といわれていますから、5000億円がどれほど大きな額かわかるでしょう。高輪ゲートウェイを見たかったのは、グローバルゲートウェイ品川の再開発が名古屋(特に名古屋駅)にどれほどのインパクトをもたらすかイメージしたかったからです。

 

 先ほど高輪ゲートウェイ駅と品川駅は1キロも離れていないと書きましたが、実はグローバルゲートウェイ品川の開発エリアは線路に沿って細長く、その端と品川駅は接しています。つまり整理すると、これから誕生する新しいグローバルゲートウェイ品川という街は、「リニア駅ができて羽田空港にも近い品川駅から歩いて110数分」「山手線・京浜東北線の品川、高輪グローバルゲート、田町の3駅のいずれかなら徒歩5分以内」「大手町・丸の内エリアのある東京駅まで10分」という立地に、名古屋圏の4倍の経済規模を有する首都圏の文字通りゲートウェイ“として「名古屋駅」と対峙するということです。

 

 リニアが開業すると「名古屋は東京にストローされる」という話はよく聞かれます。ただ、確かに名古屋はストローされるとしても、名古屋駅だけは発展し続けるのではないかという見方がまだまだ主流だと思います。私自身も数か月前まではそう考えていました。しかし実際に起きる勝負は「東京vs名古屋」というより「品川vs名古屋駅」だと思います。

 

残念ながら私には名古屋駅が品川と伍して戦える方法が思い浮かびません。JRセントラルタワーズ開業に始まる名古屋駅の大発展(いわゆる名駅ビッグバン)により、岐阜や一宮、大府、刈谷、安城、勝川など名古屋駅にほど近いJRの主要駅前は軒並みマンション街になりました。名古屋駅と岐阜の間に起きたことが、品川と名古屋駅の間で起きない理由はどこにもありません。

 

リニアが開業すると名古屋は「高輪ゲートウェイ」にぺしゃんこにされるかもしれない。これが今回皆さんにお伝えしたかったことです。

 

 

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2018.8.24

 

12.集中講義「セルフプロデュース論」

 

 大学は夏休み期間中なのに、私は学期中にさぼった仕事を夏休みに回してしまったため、ほとんど休みはありません。これも自業自得ではあるのですが・・・

 

 さて学期中にやるべきことを夏休みに回した仕事の一つが「セルフプロデュース論」という講義です。通常、自分の勤務校の授業は学期中に行うものなのですが、私は学期中の授業コマ数が増えるのが嫌で、この科目は夏休みの©集中講義にしてもらっています。ちなみに今年度の週あたりの授業コマ数は大学院を含めて前期(春学期)、後期(秋学期)各7コマ。これは相当多いようで、国公立の先生にこの数字を言うととても驚かれます。

 

2018年度春学期(7科目)

 現代経済分析、基礎セミナー(1年ゼミ)、専門基礎演習(2年ゼミ)、現代社会演習1(3年ゼミ)、現代社会演習2(4年ゼミ)、セルフプロデュース論(集中講義)、自治体戦略論演習(大学院ゼミ)

 

秋学期(7科目)

 地域経済論、プロジェクト演習A,専門基礎演習(2年ゼミ)、現代社会演習1(3年ゼミ)、現代社会演習2(4年ゼミ)、自治体戦略論研究(大学院)、自治体戦略論演習(大学院ゼミ)

 

 それはさておき、私にとってこの「セルフプロデュース論」は自分の担当科目の中でやっていて一番楽しい授業です。

 

 今回の受講者は14名。授業というよりゼミの規模で、進め方もグループ討論、プレゼンなどゼミのスタイルです。授業は次の15回を、一日3回分ずつ5日間連続で進めていきます。5日間毎日顔を合わせるので、受講者一人一人のことが徐々にわかってきます。

 

【セルフプロデュース論 授業計画】

1回 イントロダクション ~ セルフプロデュースって何?

2回 社会を生き抜くためのセルフプロデュース(1) ~ 他人の評価はいつ・どのように決まるか

3回 社会を生き抜くためのセルフプロデュース(2) ~ ポジティブサプライズを創る

4回 社会を生き抜くためのセルフプロデュース(3) ~ 「リーダーシップをとる」ということ

5回 自分を強くするためのセルフプロデュース(1) ~ アドラーに学ぶ(その1

6回 自分を強くするためのセルフプロデュース(2) ~ アドラーに学ぶ(その2

7回 秋元康に学ぶ ~ あえてリサーチしない発想法/頭の中のマーケティング

8回 秋元康に学ぶ ~ 正解は自分の中にある

9回 秋元康に学ぶ ~ 仕事の壁は乗り越えるな

10回 自分を強くするためのセルフプロデュース(3) ~ セルフリスクマネジメント

11回 あなた自身のセルフプロデュース戦略を考える(1) ~ 戦略思考プラットフォーム「SWOT分析」の基本

12回 あなた自身のセルフプロデュース戦略を考える(2) ~ 自分をSWOT分析してみよう(強み、弱みの把握)

13回 あなた自身のセルフプロデュース戦略を考える(3) ~ 自己SWOT分析の続き

14回 あなた自身のセルフプロデュース戦略を考える(4) ~ 自己SWOT分析のプレゼン準備

15回 あなた自身のセルフプロデュース戦略を考える(5) ~ プレゼンテーション

  教科書:NHK出版「秋元康の仕事学」

 

 以前から私を知っている人に、私がこんな授業もやっていると話すと一様に「なんで?」と聞いてきます。確かにそうでしょうね。私は一応地域経済や都市戦略が専門で、ついでに経済全般についてなら薄っぺらに話せると思われていますが、それなのに、どうしてそれらと無関係な「アドラー心理学」、「秋元康」、「SWOT分析」でセルフプロデュースを語るのかと。

 

 これは、私が大学教員としては“マイノリティ-”の民間企業出身者という点に理由があります。これは実際なってみて気づいたことですが、大学教員というのは基本的に上下関係がなく、仕事で人を評価する機会も評価される機会もほとんどありません。このため、社会人として人を評価する・されることに慣れておらず、このことが例えば学生の就活指導に関与しようとしない、あるいは関与しても的外れな指導をしているように感じることがあります。

 

 私は大学卒業後、日本長期信用銀行という金融機関で10年勤務し、一人の若手行員として、上司から評価される立場を経験しました。また名古屋と東京で新卒者の採用活動に関わり、「どういう学生が企業に選ばれるのか」を見てきました。さらに、長銀から転職した共立総合研究所という地方シンクタンクでは、社内外で評価されるには何をすればよいかを試行錯誤しながら実践し、最後は副社長という立場で社員の評価も行ってきました。大学教員でこうした経験を持つものはとても珍しいと思います。この経験を授業という形で学生に伝えることができないものかと思って作ったのが「セルフプロデュース論」です。

 

 この科目の特徴の一つが、「普段成績(GPA)の低い学生が(むしろ)いい成績を取る」ことです。今回も入学以来一度もS(最上位の成績)を取ったことのない、4年間で卒業できるか微妙な学生がSを取りました。大学というところには、入学後何かのきっかけで意欲を失ってしまった学生がいます。私はこうした学生を含めて、社会に出てから自信をもって未来へ進んで欲しい持っています。「セルフプロデュース論」は彼ら・彼女らの背中を押してあげるための授業です。

 

 この4年生は授業終了の感想にこんなことを書いてくれました。

 

 「単位目的で履修しましたが、仕事上だけでなく、今までの悩みやこれからの生き方に強く響く内容で多くのことを考えさせられました。これまで自分は行動力がないからとたくさんのことをあきらめていましたが、それはただの決めつけだったのかもしれないので、やらなければと思ったことはすべてやる気持ちで活動したいです。」

 

 「セルフプロデュース論」は来年度も夏休みの集中講義として開講予定です。現代社会学部の2年生以上ならだれでも受講できますので、ぜひ多くの人に受けて欲しいと思います。(ただしゼミスタイルの授業のため定員は32名です)

 

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2018.6.7

 

11.名古屋城木造復元天守閣のエレベーター設置問題

  

 私は日曜日の中日新聞朝刊に掲載される「中日新聞を読んで」というコラムを月に一度担当しています。

先日ここに「2つのエレベーター」というタイトルの文を載せました。

 

 Twitterには木造復元される天守閣にエレベーターなどバリアフリー設備の設置を求める障碍者団体に対して、「障害者のわがまま」とか「クレーマー」だとかといった批判が数多く書きこまれています。

 

 木造での完全復元を重視する立場からエレベーターがないほうがいいという考えは理解できなくもありません。ですが、設置を求める声をただ単に「わがまま」と切り捨てるのはいかがなものかと思います。そういう人は自らが足を悪くするなどで「少数派の弱者」なることなど考えもしないのでしょう。

 

 エレベーターの話に限らず、私は常日頃から日本人は少数派に冷淡な国民だと感じています。米軍基地に反対する沖縄の人や、福島の原発事故避難者、外国人労働者など、多数派に逆らうとあっという間にクレーマー呼ばわりをされてしまいます。

 

 このコラムは自分の書いたものではあるものの、中日新聞からは原稿料をいただく代わりに二次使用の権利を渡しているためで当は勝手に掲載するのはダメなのですが、このサイトを見るのは主に本学学生で、皆さんの考えてもらう材料として再掲することにします。

 

<以下引用>

 

 「2つのエレベーター」 江口 忍

 (2018年6月3日付中日新聞「中日新聞を読んで」より)

 

 

 

 名古屋市は木造復元を予定している名古屋城新天守閣にエレベーターを付けない方針を示した(五月九日付朝刊一面)。名古屋城天守閣の木造復元は河村たかし市長の看板公約で、昨年の市長選で市民の理解を得ている。しかし障害者や高齢者が上層階に上がれない可能性を含めて理解されていたかは疑問だ。市は今後国内外にエレベーター以外の昇降技術の提案を募るというが、階段を使えない人の昇降方法を決めないまま、エレベーターなしを前提に木造復元を進めるのは全くの見切り発車だ。仮に市民の多くが「障害者は上がれなくてもしょうがない」と思っても、これは社会の公平性と少数者の人権に関わる問題だ。「多数が認めているのだから我慢しろ」では済ませられない。

 新天守閣のエレベーター問題では、名古屋市が木造復元を議論する有識者会議でエレベーターを設置しない方針を示した際、会議の発言者が二人だけだったとの記事(五月十日付朝刊第二社会面)には大変驚いた。ある委員からは「エレベーター設置の有無にかかわらず、老若男女、歩行困難な方が最上階までスムーズに上がれるようにする必要がある」との意見が出されたが、他のメンバーは何のために会議に出ていたのだろう。

 先日名古屋の地下鉄栄駅からサカエチカのクリスタル広場へ向かう連絡階段に地下街では全国初の斜行エレベーターが設置された(五月十七日付朝刊市民版)。階段は全部で十八段。栄の地下街のメイン動線にあり、一日に五万六千人が利用する。階段中央に設置されたエレベーターは階段幅の三分の一を占め、通行の妨げになりうる。一方でエレベーターの設置は名古屋を全ての人に快適で開かれた街にする大事な一歩でもある。市民の中に「自分は排除されている」という思いで木造天守閣を眺める人がいるとすれば、新天守閣は「市民の誇り」になどなれるはずもない。二つのエレベーターの間で名古屋のあるべき姿が問われている。(名古屋学院大教授)

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2018.4.21

 

10.松坂屋の英断

 

 4月20日の中日新聞朝刊1面に、「大丸松坂屋 栄に新店舗、再開発計画に弾み、20年後半開業目標」という記事が大きく載りました。このニュースは以前から一部の新聞が先行して伝えていましたが、中日新聞が一面に載せたことで”公認”されました。

 

 新店舗ができるのは栄交差点の北西角で、ティファニーが入っていた日本生命栄町ビルの跡地です。記事によれば建物は地上6階、地下2階建てで、延べ床面積は6300㎡。商業施設としてはかなりコンパクトなサイズです。地下街からはちょうどサカエチカのクリスタル広場に直結する好立地です。

 

 今回の新店舗出店は、名駅に押されて続けている栄にとって大変明るいニュースであるとともに、大丸松坂屋にとっては大きな決断だったと思います。それは新店舗が大丸松坂屋の既存店(松坂屋とパルコ)からかなり離れた場所にあり、回遊が期待できないからです。それどころか、新店舗が人気を集めて成功した場合、近くにある三越やスカイルを利することになります。

 

 それでも大丸松坂屋がこの場所に新店舗に作る決断をしたのは、大丸松坂屋という一企業としてではなく、「オール栄」として名駅と勝負をしていく腹をくくったのだと思います。今の栄に必要なことは、個々の商業施設や、大津通や広小路通などそれぞれの通りごとに作られている商店街の利害を超えて、栄全体でまとまっていこうという意識です。栄はエリアが広いため、南エリアの発展は北エリアの脅威であり、大津通の発展は広小路通の脅威になります。栄全体が均等に発展するすることは困難です。それ故に今まではともすると栄の中で足の引っ張り合いのようなことがあったといわれています。しかし、昨年のJRゲートタワー開業で、栄vs名駅の競争は完全に勝敗の決着がつきました。民間というのは必ず勝ち馬に乗ろうとします。負け馬に乗りたがる人など決していません。今の時期に民間資本に栄への投資を期待するのは困難です。そうした中で栄の雄である大丸松坂屋(松坂屋)があえて新店舗出店を決めたことは、是が非でも栄を衰退させないという強い意志の表れとみるべきでしょう。

 

 ただ、今回の新店舗は6月に閉館する丸栄の目と鼻の先です。何の根拠もない話ですが、もしも丸栄の再開発ビルに松坂屋が入るつもりで、今回の新店舗がその布石だとしたら・・・・そんなことを考えてみるのも頭の体操として面白いかもしれません。

 

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2018.4.4

 

9.新年度を迎えて

 

 2018年度が始まりました。名古屋学院大学現代社会学部も今年度でスタートから4年。ようやく1年生から4年生まですべての学年が揃いました、私のゼミも機械的に私の担当になった1年生18名を含め、4学年で55名という大所帯になりました。

 

 今年度は、4年生についてはなんといっても就活と卒論がメインになります。私のゼミはおそらく本学の中では就活力の高い学生が集まるのでそれほど心配はしていませんが、就活が彼らの望むような形で終えられるように最大限のサポートをしていきます。

 

 3年と2年はゼミのテーマに沿って、「自分で考え、自分で動く」ことができるような指導を行っていきます。そして就活の時に「江口ゼミにして正解だった」と思ってもらえるようになることを目指していきます。

 

 1年は、まずは大学生活を慣れ、友人を作った上で、意欲を持って4年間の大学生活を送れるよう、できるだけいろいろな刺激を与えていきたいと思っています。大学生活は最初の一年をどう過ごすかでその後の3年間の過ごし方が大きく左右されます。1年ゼミ生にも後になって「江口ゼミに割り振られてよかった」」と思ってもらえるように努力していきます。

 

 では、各学年のゼミ生の皆さん、一年間楽しくやっていきましょう。

 

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2018.2.14

 

8.卒論は必要か

 

 大学3年のこの時期は就活が本格化し始めます。私のゼミ生たちも志望業界・企業選びにエントリーシート準備などで忙しくなってきたようです。私のゼミ生は「自分で考え、自分で動く」ことができるので、就活でもさほど困らないと思っています。

 

 さて就活が一段落すると今度は卒論作成が待っています。既に1月中には研究計画書(6000字以上)の作成が終わっていて、どのように研究と執筆を進めていくかはどのゼミ生も概ねイメージはできています。私のゼミでは卒論テーマに制約はありません。ただゼミ生には、①ゼミのテーマから無関係であっても「自分の知りたいこと、研究したいことを書く」 ②誰かの本や論文をなぞるだけで終わりにせず、論文の体裁は整っていなくても「自分の考えを加える」 ③いやいや書くのではなく、時間を無駄遣いして「卒論を書く過程を楽しむ」 の3つを心がけるように伝えています。

 

 ところで現在多くの大学が卒業要件として卒論を課していますが、私はこのことに対して大いに疑問を持っています。

 

 その理由は「卒論作成以上にゼミで指導すべきことがある」と考えるからです。大学教員には「卒論こそが学問の大学での学びの集大成」という考えが根強くあります。ですが30年近く民間企業にいて、講演の場などで企業経営者から新入社員への評価を聞く機会が多い私は、大学教員は学生に長い論文を書かせるより「顧客との応対記録や報告書を書いたり、会議でちゃんとした議論ができるようにすべき」という気持ちを強く持っています。

 

 大学の先生は、「それは学問の探求の場である大学の役割とは違う」という考えが”常識”のようですが、私は大学が:大衆化した今日においては、基本的に「大学は教育サービス業であるべき」という考えです。もちろん大学が研究の場、学問探求の場であることを否定するつもりはありません。ですが、それを理由に学生を「顧客との応対記録や報告書を書く、会議でちゃんとした議論をする」ことができないまま社会に送り出していいことにはなりません。私は少なくとも自分のゼミ生については社会人として使えないと思われないようにしてあげたいと思っています。

 

 私が卒業した名古屋大学法学部は卒論が必修でなく卒論を書くのは学年に数名だけで、その代わりにゼミが活発で4年も一年を通じてゼミが行われていました。私のゼミ担当だった森嶌昭夫先生(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A3%AE%E5%B6%8C%E6%98%AD%E5%A4%AB)はハーバードロースクールにいらした方で、当時はまだ珍しかったハーバード流の「ケースメソッド」の手法をゼミ指導に使っておられました。森嶌ゼミは学生にも人気が高く、意欲的な学生が集まり、ゼミ時間以外にもゼミ生が集まって議論することも日常でした。振り返るとこのゼミのおかげで私はずいぶん成長することができたと思います。大学卒業後に私が就職した日本長期信用銀行は東大、京大、一橋出身者だけでで総合職行員の6割以上、早慶を加えるとて8割以上を占めていましたが、名大出身の私が在職中に能力不足を感じたことはありませんでした。

 

 本題から少々それてしまいましたが、私はこの名古屋学院大学現代社会学部においては、卒論を書くために一年使うより、ゼミの時間を報告書などの基本的な書き方、メモや記録の取り方、議論の仕方などを学ばせることに使う方が意味があると考えます。もちろん卒論を書きたい人は書けばよいでしょう。ただ必修として全員に卒論を課すのではなく、例えば、一定期間以上の留学やインターンシップ、ボランティア活動、論文以外の映像や音楽、ソフトウェアなどの制作、負荷の高いプロジェクト演習などとの選択制にするのが望ましいと思います。ただ「素人教員」のこの意見が大学で受け入れられるのは容易ではありませんが・・・。

 

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2017.11.23

 

7.リニア開業後の東海道新幹線

 

 愛知県の愛知県の東三河や静岡県の遠州の自治体の方とリニアの話をすると、「うちの市はリニアなんて関係ない」という反応をよくされます。しかし、本当にそうなのでしょうか。私はこれらの地域にも以外に大きな影響があると考えています。

 

 それは、リニアができると東海道新幹線のあり方が変わるからです。東京-名古屋間がリニアで40分で結ばれると、1時間半以上もかかる新幹線に乗る人は激減するでしょう。そうなった時、東海道新幹線はのぞみ主体で今と同じ本数で列車を走らせるでしょうか。

 

 私の2年ゼミでは、今このテーマを全員で掘り下げています。具体的には、リニアができると東海道新幹線はどのような運行スタイルになるのか、本数や料金はどうなるか、旅客以外の利用の可能性はあるのか、仮にひかり・こだまのような停車駅が多い運行が増え、利用者確保のため料金を引き下げたとしたら、豊橋や浜松などの産業、観光、まちづくりなどにどのような変化をもたらすかなどを今から2カ月ほどかけて共同で調査をして、結果をマスコミの方などに向けて発表しようと考えています。

 

 果たして思ったように調査結果をまとめられるかはわかりませんが、こうした調査を行うことも、設定したテーマも、ゼミ生自身で考えたことです。教員としては少々雑なところが見えてもできるだけ口は出さず、凸凹が見えても学生らしい面白い調査になることを期待しています。

 

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2017.10.23 

 

7.金山の可能性(その2

 

2017.8.12付の「3.金山の可能性」でも書きましたが、私はここ2年ほど、新聞やテレビの記者の方から「今一番関心のあるテーマ・場所は何ですか」と訊ねられると「金山」と答えています。金山は下品な表現をすると「お金の臭い」がします

 

さて,昨日の中部経済新聞に、金山南の名古屋ボストン美術館が来年108日に閉館するとの記事が出ていました。「名駅ビッグバン」から18年。今度は金山の大変貌の始まりです。

 

金山は多くの高校大学へのアクセスがとても良いのが特徴です。地下鉄環状線・名港線沿線には名大、南山、中京、名城(ナゴヤドーム前キャンパス)、愛知学院(名城公園キャンパス)、そして名古屋学院。またJR中央線沿線には名工大、名大医学部。さらに岐大、豊橋技科大、日本福祉大、中部大など名古屋市外の大学へのアクセスにも恵まれています。

 

閉鎖される名古屋ボストン美術館の跡はまだ利用が決まっていません。しばらく前に名古屋市は美術館を軸に考えているという話を耳にしましたが、美術館で失敗した場所に再び美術館を呼ぶというのはあり得ない選択です。商業施設を呼んだらどうかとの声もあるようですが、もしも金山を商業的に発展させることは「栄を殺す」ことになります。名古屋市のような大きな都市のまちづくりは「部分最適」であってはなりません。

 

名古屋ボストン美術館の跡地について、私は、「建物が美術館仕様で窓がない」、「名駅に便利」、「多くの大学からのアクセスが良い」、「誘致の際に名商が100億円も寄付した」、「製造業が集まる西三河にも便利」などを考えると、規模不足は否めませんが、グランフロント大阪のナレッジキャピタルのような大学のオープンイノベーション拠点が最もふさわしいと思っています。金山に新たな再開発ビルが出来たらそちらにサイズアップして移転すればよいでしょう。

 

ここを何にするかで、向こう10年、20年の金山の方向性が大きく左右されます。名古屋市にはリニア時代の名古屋の都市戦略を見通したあり方を考えて欲しいと思います。

 

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2017.10.13

 

6.ゼミ1次選考終了

 

 昨日来年度の2年ゼミと3年ゼミの1次選考が終了しました。それぞれ定員は15名で2年ゼミは17名、3年ゼミは9名が応募してくれました。3年ゼミは定員をかなり下回ったので全員を内定。2年ゼミは13名を内定しました。

 

 2年ゼミの選考では、入ゼミの目的と私のゼミについてどれだけ事前に理解をして応募してきたかの2点を特に重視しました、このため入ゼミ目的があやふやな人や(必ずしも将来の職業選択に直結していないのは問題なし)、ゼミナールガイドブックやゼミのホームページで強調したゼミ生の自主性や「自分で考え、自分で動く」というゼミモットーを答えられない人は評価を下げました。また応募書類は熱意を持ってたくさん書いた人と、あっさり済ませた人に分かれましたが、ゼミ選考は他の応募者と評価を競う場ですから、書類一つでも甘く見ないで、ベストを尽くして自分を売り込んで欲しいと思います。

 選考では最後数名の中から誰を残そうか迷いました。その際には最近の授業出席状況と基礎セミナー担当の先生の意見を参考に決めました。選考ではあえてGPAは見ませんでしたが、合格者の平均GPAは2.87で、恐らく来年度の2年ゼミの中で最も高いのではないかと思います。


 3年ゼミは選考はありませんでしたが、私のゼミは他のゼミより高い自主性が求められ、やることも多くて厳しいことを理解して応募してくるだけあって、しっかりとした目的意識を持った学生が集まってくれました。こちらも平均GPAは2.52と学部平均(約2.2)を大幅に上回っています。

 

 10月23日から11月3日まで2次募集が行われます。2年ゼミはまだ2名、3年ゼミは6名受け入れることができます。どちらのゼミも必ずしも定員いっぱいまで受け入れるかどうかはわかりませんが、意欲のあるメンバーの中で自分を高めたい気持ちのある人はぜひ応募してください。

 

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2017.9.17

 

5.ゼミ選択

  

先週金曜から来年度のゼミ募集が始まりました。対象は今の1年生と2年生です。1年生は2年生の間の1年間、2年生は3,4年の2年間の所属ゼミを決めます。私のいる現代社会学部は、法学部、経済学部、社会学部、文学部(心理学や文化人類学)、総合政策学部(まちづくりや観光系)など、いろいろな学部の要素を一つにまとめた学部なので、ゼミの種類は実に多彩た活動内容も、テキスト輪読中心のゼミ、もあれば、フィールドワーク主体のゼミもあって実にさまざまです。普通の大学のゼミ選びは、和食か中華かイタリアンかなど大まかな料理の種類が決まっている中でレストランを決めるようなものなのに対して、この学部のゼミ選びは和食にするか中華にするかから考えないといけないので、学生たちはゼミ選択にかなり悩むようです。

  

そこで今回はゼミの選び方について書きます。もしも私が学生だったら、次の順番でゼミを選びます。ます初めに今年度から用意された「ゼミナールガイドブック」をよく読んで、

 

①全く興味の持てないテーマのゼミは外す。

②残ったゼミの中でガイドブックからゼミのスタイル(活発なゼミかそうでないか、座学か外に出るかなど)を読み取り、自分に合ったところに絞り込む(必ずしも活発で外に出るゼミが自分に合うとは限らない)。

③担当教員の情報を集める(基礎セミナーを担当している教員なら情報は入りやすいし、そうでないなら先輩に聞いたり、その教員の担当講義の授業アンケートを見てみたりしてみる)

④とりあえず他の応募者の”誘い水”として候補のうちのどこか一つのゼミに応募して、他にどんな学生が応募してくるかを見極める。

⑤最終的に第一希望のゼミが決まったら、志望意欲の高さを伝えるために早めに応募し、あとは志望変更しない。

  

このうち私は④が大事だと思っています。ゼミ選びで大切なのは、どんな学生がゼミ生になるかということ。ゼミでいろいろなことをやりたいのに周りがやる気のない学生ばかりだったらつまらないゼミ生活、つまらない大学生活になりますし、自分はそれほど真面目にゼミ活動をするつもりがないのに、周りがやる気全開な学生ばかりだとゼミで居場所がなくなります。だからどんな学生が志望しているか(志望しそうか)の情報はしっかり集めておいた方がいいと思います。

 

 幸いにして、うちの学部には極端に厳しい教員はいませんし、どの教員も総じて性格は穏やかですから、教員によるいわゆる「当たりはずれ」は心配ありません。

  

 応募期間は9月29日金曜までです。それまでしっかり考えて、自分にあったゼミを選んでください.。

 

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2017.8.19

 

4.これまでの人生で泣けた映画ベスト5

 

唐突ですが今回は「映画」の話です。なぜこんなテーマにしたかというと、それは来月11日に予定されている履修ガイダンスで現代社会学部1年、2年全員に配られるゼミ紹介の冊子を見てもらえればわかると思いますのでここでは説明は省きます。

 

それでは、私がこれまでの人生で泣けた映画ベスト5を紹介します。

 

1位 「いま、会いにゆきます」 

2004年公開/主演:竹内結子、中村獅童/主題歌:ORANGE RANGE 「花」)

      これぞ恋愛映画の金字塔。この映画のラスト10分で泣かない人は人ではありません。

 

2位 「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」

2016年公開/主演:福士蒼汰、小松菜奈/主題歌:back number 「ハッピーエンド」)

最近の胸キュン系映画では圧倒的ナンバーワン。この映画の小松菜奈はかわいすぎ。

 

3位 「クレヨンしんちゃん ガチンコ! 逆襲のロボとーちゃん」

2014年公開/主演:野原しんのすけ、野原ひろし、ロボとーちゃん/主題歌:きゃりーぱみゅぱみゅ 「ファミリーパーティー」)

人間とは何か、父親とは何かを考えさせられる作品。ラストの腕相撲のシーンは号泣間違いなし。

 

4位 「フィールド・オブ・ドリームス」

1989年公開/主演:ケビン・コスナー)

ロボとーちゃんと同じく父子もの。これを見た男の子は父親とキャッチボールしたくなるはず。

 

5位 「パコと魔法の絵本」

2008年公開/主演:アヤカ・ウィルソン、役所広司、妻夫木聡/主題歌:木村カエラ 「memories」)

      1日しか記憶が持たない少女のため大人たちが思い出を残そうと奮闘するファンタジ^―。笑って泣ける感動作。

 

これらはすべてDVDを持っていますからゼミ生には貸出しますよ。

 

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2017.8.12

 

3.金山の可能性

 

このところ名古屋市役所やマスコミの方とお話をすると、金山が頻繁に話題に上ります。今名古屋で一番旬なエリアといってもよいでしょう。

 

金山は利便性が非常に高いにもかかわらず、今まで過小評価されてきたスポットです。金山の特徴(強み)としては、①JR・名鉄・地下鉄・市バスの乗り換えが便利、②名古屋駅から便利(所要時間5分前後で平日昼間でもJRと名鉄を合わせて1時間に40本運転)、③三河方面やセントレア方向からの名古屋の玄関、④大学が多い地下鉄名城線への乗り換え拠点ということもあり、名大をはじめ市内の大学へのアクセスが良好(さらに岐大、豊橋技科大、中部大など市外の大学へも便利)、⑤駅周辺の土地の大半を名古屋市が管理しているので再開発がしやすい などが挙げられます。

 

さて、名古屋市は今年3月に「金山駅周辺まちづくり構想」をとりまとめました。詳細は名古屋市のホームページに公開されています(http://www.city.nagoya.jp/jutakutoshi/cmsfiles/contents/0000060/60578/kanayamakousou_honpenfull_1.pdf

 

これをまとめたのはまちづくりを担当する住宅都市局ですので当然かもしれませんが、ここに書かれている内容はほとんどまちづくりの視点からの発想で、「産業面を含めた名古屋都市圏全体の中で金山はどうあるのが望ましいか」という視点は見当たりません。

 

今回は問題提起にとどめますが、私はこれからの金山のあり方は名古屋市だけにとどまらず、広く名古屋都市圏全体の発展にも関わってくる大きなテーマだと考えています。上の①から⑤に挙げた金山の特徴を名古屋都市圏の発展に最大限に活かせるような金山の姿を今一度フラットに考えてみる必要があると私は考えます。

 

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2017.6.13

 

2.「リニアインパクトの盲点」

 

 私は名古屋市などの自治体から「10年後にリニアができたら自分のまちはどうなるか」という質問をいただきます。その中で意外なほど意識されていないことが税収への影響です。

 

 代表的な名古屋市を例に説明します。名古屋市ではリニア開業に向けて名駅の再開発が進んでいます。今年4月にはJRゲートタワーが開業し、ついに5月は名駅の百貨店売上高が栄を追い抜きました。名駅と栄の競争は完全に名駅の勝利が明らかになり、栄には新たな民間投資が進まず、昨年建て替えを発表した中日ビルも、あの場所をどう利用するかはまだ絵が描き切れていません。

 

 このような状況で、栄では現在マンションの建設ラッシュが起きています。栄といっても狭い意味での栄ではなく、伏見から丸の内、東桜までを含んだエリアですが、いずれにしても以前なら商業ビルやオフィスビルになりそうな場所まで軒並みマンションに変わっています。

 

 確かにコンパクトシティの流れに乗った都心居住の増加は、都市の整ったインフラを有効活用できるなど良い面もあります。しかし、居住用不動産というのは固定資産税・都市計画税が大幅に軽減されていて、商業ビルやオフィスビルに比べると大幅に税収が少なくなります。確かに名駅の再開発で名駅から得られるこれらの税収は増えるでしょうが、名駅に比べて栄の範囲は広いですし、マンションになってしまったところも相当多いため、栄から得られる固定資産税・都市計画税は今後相当な減収になることが想像できます。市町村にとって固定資産税・都市計画税は税収の中心を占める重要な財源です。名古屋市にとって栄から得られるこれらの税が減ったら、名古屋市の財政基盤にかなりの影響が出るでしょう。

 

 私は時々「名駅が発展しているのだから栄が衰退しても構わない」という声を聞くことがあります。しかしそれは間違っていると私は思います。名駅が発展しているからといって、栄を「住宅地」にしてしまうことは絶対に避けなければなりません。ただ一度負け組の烙印を押された栄を再生させるには、どうしても名古屋市が思い切った投資を行いテコ入れをしなければならないと思います。

 

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2017.5.20

 

1.「ゼミのホームページができました!」

 

 ついに名古屋学院大学現代社会学部江口ゼミのホームページができました。大学教員に転じて今年で3年目。これまでずっと、どこの大学(学部)と学生にとってどんなことをするとプラスになるかをずっと考えてきました。このホームページを開設したのは、その答えの一つです。私が知る限り、この大学でホームページを持っているゼミはありません。またサブゼミを行っているゼミも聞いたことがありません。

 

 しかし、関東や関西の大学ではホームページもサブゼミも何ら珍しいものではありません。関東の有名私大ではむしろあるのが”常識”といってもいいでしょう。私はまともなゼミがどのくらいあるかがその大学の学生の質や就職実績を決めると考えています。私は長銀時代に名古屋と東京で採用のリクルーターをしていたことがあります。当時の記憶として、面接の時にバイトや部活・サークル以上に、ゼミについてちゃんと話せる学生かどうかが採用で重視されていました。もちろん学力不問の企業に就職するならゼミに真面目に取り組んだかどうかは問題にならないでしょう。しかし、私は自分のゼミ生にはそういうところには就職をしてほしくはありません。どのような仕事であっても、明るさや愛想だけでなく、考える力、まとめる力、発表する力などを活かせる仕事について欲しいと思っています。

 

 ゼミのホームページを作ってゼミの活動内容を公開しなければならなくなると、学生にも教員にも、あまりくだらないこと、お粗末なこと、浮世離れしたことはできないというプレッシャーがかかります。また、来年度以降、意欲的な入ゼミ希望者を「確保するためにも、ゼミ活動を見てもらえるようにすることは大事だと思います。

 

 今回のホームページ開設には、HP担当の田崎君、古森君、安藤君と、ゼミ長の磯貝君が進めてくれました。このホームページは江口ゼミの大事な財産になっていくはずです。ゼロから立ち上げるのは大変だったでしょうが、お疲れ様。どうもありがとう。